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友人SがTRINITYを買ったときは、そりゃもう羨ましかったです。と同時にハイエンドが触れるぜ、とうれしく思いました。浅ましいですね。当時Sはもう社会人になってまして、社会人は金持ちだ、とそのとき最もダイレクトに感じたのでした。まあ、社会の構成員の常として彼もしきりに休みがないとボヤいてますが。

とにかくTRINITYはLCDの大きさがどうしても目立つわけで、いかにも便利そうなのです。ところがQY10、X3Rをかつてメインマシンとして愛用してきた私にとってそれは別にそれほどたいしたことではありません。それよりもデカイがゆえの描画の遅さがネック。音色のエディットなどの場合はさして気にならないのですが、シーケンサのイベントエディットなんかだと遅い遅い。どうやら一行描き換えるだけの変更なのに全画面を描いてたりするらしく、煩わしいと感じることもしばしば。よく考えると、音色のエディットは小さい画面でもかまわないけれど、シーケンサのイベントデータは前後関係が一目瞭然の広い画面が有効なので、なかなかうまくいかないもんだなと考え込むことしきり。
それからタッチビュー(実際は本当のタッチパネルディスプレイではないので、私とSとの間ではプッシュビューと呼ばれている)。こいつがまた曲者で、抜群のレスポンスとは言い難く、何故か分からんけど利き手じゃない左手ではほとんど反応しない(テンキーが右側にあるので、どうしても左手で押したくなる)。せめてカーソルキーがあればどうにでもなるものを。
ただ数値の入力に関してはダイアル、+1キー、-1キー、スライダー、テンキーと至れり尽くせりで、どれも利用価値があります。

TRINITY Plusはソロシンセ音源のMOSS(Multi Oscillator Synthesis System)を搭載していることもウリです。あいにくフィジカルモデリングのオシレータはほとんど使いませんでしたが、スタンダード(アナログシンセのシミュレート)を使ってもVPM(バリアブルフェイズモジュレーション)を使っても、モジュレーションの多彩さがやはりミソ。考えられるほとんどのパラメータがディスティネーションになります。基本的に4つずつあるエンベロープジェネレータとLFOがソースになるのですが、私が気に入ったのがポルタメントをソースにしてワウを発動させるというやりかたで、ポルタメント作動中だけフィルターが開くので、つながってるんだけどアタックがあるような音になります。

Access(Advanced Contorol Combined Synthesis System)という名のPCM音源も、48kHzサンプリングの元波形がいいのか、D/Aがいいのか、しっかりした音を出します。マルチサンプル375種にドラムサンプル258種も十分な数ですし、フィルターはローパス、ハイパス、バンドパスにバンドリジェクトまで搭載し、ふたつまで併用可能です。X3Rと違ってレゾナンスも当然ついてるので、シンベなどをつくるときはローパスをシリアルでつなぐのがお決まりでしょう。私はハイパスで薄っぺらにするのが好きですし、オーソドックスなシンセっぽい波形を選び、ローパスとハイパスを(順序は入れ替えてもよかったと思う)シリアルでつないで、すこしレゾナンスを効かせる(手許にないので詳細は分からん)とこれがまたいける音になります。でもこのレゾナンスはTG300と違ってあまりパッドには向かないと思います。TRINITYの方がフィルターカーブが急峻で効きが鋭いからかも知れない。

それから今回もやはりコルグのエフェクターは充実しています。TRINITYのエフェクトプログラムにはそれぞれSizeという数値が決められていて、重さに比例して1、2、4となります。基本的なエフェクト(ディレイ、コーラス、EQ、オーバドライブ、フランジャー、フェイザーなど)は1で、そのステレオタイプ(紋切り型という意味ではない、念のため)のエフェクトや、オートパン、ロングタイムディレイなどは2。4になるとボコーダーやホールドディレイ、ピアノの共鳴をシミュレートするものまであって、それらは合計8まで同時使用できます。その他にもマスターエフェクトも2系統あり、リバーブなどはそれを使うことになるでしょう。
この数多あるエフェクトのなかでもいけるのが、デシメーターです。これはサンプリングレイトを落とすエフェクターですが、ある程度ハイがザラザラ出ながらも、レイトが落ちる感覚はえも言われぬものがあります。このレイトはダイナミックモジュレーションのディスティネーションに設定することもできるので、リアルタイムに変更することができます。それにSizeが1、ステレオで2というリーズナブルさも魅力。

X3Rに慣れていたので、TRINITYのシーケンサも問題なくなじむことができました。記憶容量が80,000ノート、レゾリューション4分音符/192ということ以外はX3Rと全く同じです。たしかにシステムとしては完成されています。X3Rと同様、コルグのパターンは使いやすいです、とても。

TRINITYは32ポリというのが意外に聞こえるほどよくできたワークステーションです。その後の、プッシュビューの老朽化さえなかったらもっとよかったのに。とはいってもやっぱりフラッグシップマシン、いいなあ。

(1998.05/29)






TRINITYのプレイバックサンプラー・オプションです。これを装着すると、プログラムのバンク数が増えたり、AIFFが読み込めたりしたはずです。けれども、ちゃんとした楽音用に、鍵盤の端から端までサンプルを並べる(これをマルチサンプルというそうです)となると、これはなかなかの大作業です。ベロシティのスプリットなどを考えなくても、ひとつのサンプルでカバーできるのは、上下1オクターブまでで、最低でも4つか5つのサンプルが必要になるからです。それにそもそもTRINITYで作業するぶんには、内蔵の波形で充分ともいえます。次にドラム用やワンショット、ループのサンプルに使用するという方法が考えられますが、そうなると、私の場合はMPC2000で事足れり、ということになります。フィルターやピッチ、各種LFOなどをリアルタイムにいじりたい場合はTRINITYで発音させるのがいいんでしょうが、それらが固定されているのであれば、フロッピーによるサンプルデータのやりとりの手間や、容量の問題から、MPC2000に取り込んだほうが無難かも知れません。

しかし私はボコーダーを持っていないので、このオプションのメモリはボコーダー専用になりました。手順としては、まずドキュメントトーカに適当な英文などを喋らせて、SoundEdit16で録音します。もうひとつのトラックに外部からのクリックを録音して、それを見ながら、ただの言葉でしかないドキュメントトーカの声を、部分的に伸ばしたり縮めたり削ったりしながら曲のテンポに合わせていきます。それをフロッピーに入れて、TRINITYに読み込ませます。考えてみれば、TRINITYから発音されるまでは完全にデジタルなのですが、もともとがドキュメントトーカで、さらにボコーダーを通すものですから、発音が不明瞭な事この上ありません。まあ、はっきり聴かせたければ、己が歌えというのが道理ですし、私は仮に「トキオ」が「トシオ」に聴かれたところで、面白がりこそすれ困るなんていうことはないので、よしとします。
結局フロッピーでデータを渡し、アサインして、という手順は踏まなければいけないのですが、単体機そのもののスペースやワイヤリング、外部からのキャリア音源が必要な場合にはその設定など、諸々考えあわせると、なかなかスマートなボコーダーのあり方だと思います。サンプルとキャリアの音色、そのフレーズを鳴らすシーケンサ、ボコーダーのエフェクト、これだけ使っていくとTRINITYをいくらか駆使している気分になります。あとはHDRぐらいですか。

そんなプレイバックサンプラーにも、ちょっと首をかしげたくなるようなところがあります。まず、フラッシュROMに焼いたサンプルデータを消去したい場合、まるごと全部でなければ消去できないという点、これは困ります。さっきインポートしたサンプルを手直ししたいんだけど、というような時でも、それまでにあったすべてのサンプルデータまでデリートして、また全部入れ直さなくてはなりません。めんどくさいです。
それからもうひとつ、たとえばまず「SONG_01」という名前のシーケンスデータを呼び出したとします。それから「VOICE_01」という名前のサンプルをインポートします。最後にシーケンスデータを保存しようとすると、その名前が「VOICE_01」に変わってしまうという現象が起こります。もちろん今までの「SONG_01」にリネームしてから保存することになります。これには何の意味があるのか解りかねます。サンプルの名前でソングを保存する人は、あまりいないですし、TRINITYで波形編集ができない以上、もともとフロッピーから持ち込まれたデータを、またフロッピーに保存し直すということも考えにくいですから。

この度TRINITYを無事、恩人Sに返却しました(でもQY70はまだ借りてる)。これからは本来の持ち主がこってり使い倒すことでしょう。そこで自分は、この大きな穴を何で埋めるのか、そこが問題です。当面はQY70が無理にでも埋めます。

(2000.03/10)